「右脳型」とはどういうこと?
 
さて、最近は右脳ブームによって左右脳の働きや機能の違いに深い関心が持たれるようになって、「右脳を使える記憶が効率的である」とか、「素晴らしい企画が出てくる」とか、いろいろなことが言われています。そして、それに伴って「あの人は右脳型だか、この左脳型だ」というような表現もされています。
 
ここで、誤解を招かないように再定義しておくと、右脳型というのは、「右脳だけを使っている人」ということではないのです。「知的作業において、右脳と左脳をバランスよく使っている人」ということで、言葉の定義に正確に言えば、むしろ《全脳型》ということになるでしょう。
 
また、左脳型というのは「知的作業において、左脳を偏って使っている人」ということで、決して「右脳を全く使っていない人」という意味ではないのです。ですから、左右脳をバランスよく使っているのがいいのですが、社会生活を送っていく上で(ビジネスにおいても、学業においても)右脳型と左脳型とどちらが有利かと言えば、右脳型の人です。それでは、その理由は、どういうところにあるのでしょうか?
 
右脳型はストレスに強い
 
1つは、右脳型と左脳型では、知的作業に取り組んでいる時の精神的ストレスに大きな差があって、左脳型の方がストレスが大きく、それに負けやすい、ということがあります。たとえば、先ほども触れたテクノストレス症候群。同じOA機器を扱う職場にいて、就労時間も業務内容も全く同じでありながら、決して全員が冒されるわけではなく、冒される者と冒されずにすむ者、というバラツキが出る場合があります。
 
それは、脳細胞の使い方に個々人で微妙な差異があるのが原因です。たとえば、ある重量物を支えるのに、支点が3つあるのと4つあるのとでは、どちらが支点の負担が大きくなるでしょうか?重量は同じなのに、支点が3つの方が大変です。長時間、カーペットの上などに重い物を載せておき、それをどけた時にカーペットの窪みが大きいのは支点3つの方です。
 
知的作業は、こういう物理的な重量をもっているわけではありませんが、理屈は同じです。それに関する脳の領域が広ければ広いほど、各脳細胞の負担は少なくて、疲労も少なく、結論に達するまでの時間も早いのです。だからこそ、ビジネス業界でも学問の世界でも。右脳型の人が体待望されるわけです。
 
計算力における右脳の役割
 
もっと具体的な例で、数学の計算のことを考えてみましょう。左右脳の役割で考えれば、通常これは、左脳で行ないます。ところが、世の中には《暗算名人》と呼ばれる算盤の高段者がいます。7桁8桁の数字の加減乗除を、何の筆記具も使わずに苦もなくやってのけてしまいます。
 
こういう人たちの暗算時の脳細胞の使い方をポジトロン観測してみると、もちろん左脳も使っているのですが、それよりもむしろ、右脳の視覚野の方を重点的に使っていることがわかります。これはいったいどういうことでしょうか?
 
こういう人たちは、まず頭の中に想像で算盤の幻影を描き出します。そして、その想像の算盤の珠を動かし、計算をするわけです。実際にそこに算盤が存在しているのと同じくらい明確な幻影があって、それを見ているから、視覚野が活動するわけです。こういう特技を身に付けた人は、計算競争をやると電卓よりもよほど速く計算ができるのです。このような計算競争をテレビ番組で見たことがある人もいるのではないでしょか?


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