読書時の大脳の働きは?
 
さて今度は、読書時の大脳の働きについて考えてみましょう。読書する対象の文章は言語で構成されており、言語野は左脳にありますから、図示したように読書の際には、左脳が重点的に使われます。しかし、これもまた、右脳の視界野を同時に使いながら読書する人がいます。こういう人の読み方が想像できるでしょうか?
 
普通の人は、文章を読んだら、その内容をストレートに理解しつつ、読み進んでいきます。ところが、視覚野を使っている人は、文章から読み取った内容を1つの情景として頭の中に描き出し、その情景を眺めながら読み進んでいきます。だから右脳の視覚野が活動するのです。
 
たとえば、「向こうから和服姿の女性がやってくるのが見えた。とても美しい女性だった」という文章があった、とします。大多数の人は、この文章を文字どおりに理解して、それ以上のことを考えません。ところが、前述の右脳の視覚野を使う人は「美しい女性」という言葉で高嶋礼子さんなどの女優さんやモデルさん、あるいは身近な女性を思い描いたりします。また「和服」という言葉に対しては、しっとりした訪問着を思い描いたり、振袖を思い描いたりします。
 
右脳型はイメージの補強で記憶力も強化する
 
文章の中には、和服の色柄を説明したり、女性の容貌や髪型などを具体的に細かく表現する言葉がありませんから、これは自分勝手な想像です。ところが、この付け加えた想像のために、こういう読み方をする人は文章の内容を後々まで克明に覚えていて、第三者に詳しく楽に説明することができるのです。
 
言うまでもなく前者の「文章を文字通りに理解し、それ以上のことを考えない」タイプが左脳型の読み方で、後者の「できるかぎり映像変換(イメージ変換)しながら読む」タイプが右脳型の読み方です。右脳型の読み方は記憶の面で優れているというだけでなく、独創性にも富むことになります。
 
日常的に頭の中で「与えられた情報を組み合わせて、まだ与えられていない情報を、シミュレーションによって作り出す」トレーニングをしていることになるからです。また読書スピードという点でも、右脳型の読み方のほうが左脳型の読み方よりも格段に速い場合が多いのです。
 
単純記号と文字の視野の落差を知る
 
その理由を実感してもらうために、この図を見てください。何も意味もない単純な黒丸がズラリと並んでいます。ところがこれは、実は非常に意味のある検査なのです。あなたは、いちばん上端の黒丸を見て、そこに視点と固定したままの状態で、いちばん下端の黒丸をハッキリ識別することができるでしょうか?たいていの人は識別することができるはずですが、中には《ド近眼》で、下から2つ分ぐらいの黒丸がボケてしまう、という人がいるかも知れません。そういう人でも、中央付近を見て、視点を固定したままで、上下左右の四隅の黒丸は識別できる、と思います。
 
それでは今度は、活字だけのページ(もちろん、このページでも構いません)の上端の真中に視点を置いて、同じ作業をしてみてください。あなたは、いちばん上端の文字を見て、そこに視点を固定したままの状態で、いちばん下端の文字が何という文字か、識別できることができるでしょうか?
 
ところが、この場合は一転して、識別できる人は滅多にいないと思います。では、少しレベルを下げて文字ページの中央付近の文字を見て、そこに視点を固定したままの状態で上下左右の四隅の文字が何という文字であるか、識別できるでしょうか?やはり、これも、識別できる人は滅多にいないはずです。
 
それでは、もっとやさしく、ただの1行だけでを見ることにして、ある長い行の中央付近の文字を見て、そこに視点を固定したままの状態で、左右の端の文字を識別することができるでしょうか?これだけ見る範囲を狭くしても、まだ識別できる人は滅多にいないと思います。大多数の人は、視点を固定した位置を中心に、せいぜい多くて左右の5〜7文字ぐらいしか識別できないだろうと思います。


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