プロ棋士は右脳で考える
 
これは、囲碁や将棋のプロ棋士が、自分の手を考え、それに応じる相手棋士の応手をいくつか考え、さらにそれに応じる自分の手を考え、・・・・・と可能性のある手が末広がりに広がっていくのをすべて同時並行に検討して、その中で駄目な手を捨てていく、という思考形態と似たものがあります。
 
こういう迷路の場合だと、ルートの取捨選択と行き止まりにならないルートを追い続ける作業を並行してやり、さらにはゴール地点から逆に正解ルートを辿ってくる一種の《カンニング作業》も加えると、それこそアッという間、10秒とかからずに楽々とゴール地点まで突破できてしまうのです。
 
さあ、こうして最短記録の達成者の迷路突破の方式がわかったところで、皆さんもこの方式を真似して、改めて迷路突破に挑戦してみてください。あなたはどの時点まで、次々と分かれていく分岐の全方向を追うことができるでしょうか?3方向?6方向?9方向?並行しての追跡が可能な分岐の数が多ければ多いほど、あなたは右脳が発達しているということになります。逆に、最初の3方向の分岐点で早々に挫折してしまい、ある1つの方向を追おうすると、他の2方向はどうしても盲点に入ったように視野から消えてしまうという人は、かなり強固な左脳型だと言うことができます。
 
方向音痴は左脳型の証明?
 
実生活では、こういう視野の狭い人は、方向音痴になる確率が非常に高いのです。それで、先ほどのチェック・リスト1で方向感覚を尋ねたわけです。我々が生活している世界は、物理学的には3次元空間です。しかし、人間は空を飛べず、通常の生活では上下の方向の情報がありませんから、情報としては2次元で、地図という2次元の形式で、その情報を記述することになります。
 
そして方向感覚の鋭い人は、右脳の視覚野の機能をフル活用して、そのまま2次元的に情報を記憶回路に転写してしまします。そのため、あたかも1つの次元をカットしてしまって、前後関係という順序だけの1次元の情報(直列形式の情報)にして、頭の中にしまい込みます。それでも、蓄えた情報を引き出す際に再び2次元化して、復元できればいよいのですが、そうはいきません。
 
案内の地図などをハッキリと見た時でさえ、そうですから、道に迷ってしまうわけです。また、他人に自分の家や会社への地図を描いてあげる時とか、電話で道順を説明する時にも、右脳の視覚野のスイッチが切られているために、頭の中に想像で地図を再現できません。そこで、上手な地図を描くことができず、口頭での説明も上手にできず、案内のはずが逆に相手を迷わせることになるます。電話で道順を尋ねるような時に、教える側と教わる側とが、共に頑固な超左脳型だったりしたら大悲劇です。いったい到達が、どれほど遅れることになるのやら・・・・・。
 
“見る”と“見える”の大きな違い
 
このように、“見える”(単純に網膜に映っている)のと、“見る”(意識を積極的に作動させて認識する)のとは非常に大きな違いがあります。前者の状態の情報は、ほとんど活用することができず、後者の状態の情報しか活用することができません。迷路チェックで、模様だと思えば全容が見えるのに、突破には何の役にも立たないのは、その典型的な例です。
 
見る範囲が広い人は右脳の視覚野のスイッチがON状態になっており、狭い人はスイッチがOFF状態になっています。もっとも、スイッチOFFという人も、完全にスイッチが切れているわけではありません。右脳の視覚野のスイッチが完全にOFF状態になるのは、脳出血、脳血栓、脳挫傷など病的な原因によって、右脳の視覚野の脳細胞が壊死するなどの状態に陥った場合に起こります。
 
その場合は、人の顔が識別できない、他人の家と自分の家の識別ができない、アイウエオやABCDのような簡単な文字は読めるが、複雑な構造の漢字は識別できないといった状態になります。他人の顔を頭の中で思い出して再現したり、服装などを想像したりすることが困難な左脳型の人でも、当の本人を目の前にしていれば、それが誰であるかは判別がつきます。右脳の視覚野が、ちゃんと作動しているのです。ですから、左脳型の人と右脳型の人を照明器具にたとえれば、左脳型の人は暗い小電球だけがスイッチONになっていて、肝心の明るいメインの照明はスイッチOFFになっているというような感じです。


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