ページめくり訓練の必要性
 
中級・上級の速読法が進む第1段階としては、「ページめくり訓練」と呼んでいる、特殊な本のめくり方のトレーニングをやります。このトレーニングは、ついつい無精をして怠けがちになる人が多いのですが、専用ソフトだけで訓練するのと、このトレーニングを並行して行なうのとでは、伸び率に2倍前後の差が出てきます。
 
それは、後でも詳しく述べますが、この訓練が物理的に右脳に刺激を与えて活性化する効果を持っているからなのです。このページめくりでは、通常の読書のためのページめくりと違って右手ではめくらず、本の背表紙を右手で支え、左でページをめくっていきます。また、そのめくり方には、大きく分類して4通りのタイプがあります。
 
1 超高速ページめくり・・・・・全く各ページの文字が識別できない猛スピードでめくる。
2 高速ページめくり・・・・・・・識別できる文字がページの中にチラホラと点在する程度の猛スピードでめくる。
3 中速ページめくり・・・・・・・ほとんどの文字は識別できるが、文章の意味は全く読み取れない、というスピードでめくる。
4 低速ページめくり・・・・・・・全部の文字を識別することができて、文章の意味も、細切れ状態でならば何とか読み取れる、というスピードでめくる。
 
ページめくり訓練は《F1》の世界
 
まず、これらの「ページめくり訓練」の意味ですが、「2点以外読まず訓練」では、どんなに速く目を動かせるようになったとしても、文字が目の前を通過するスピードを速めるのには限界があって、目の動くスピードが上限になるからです。脳の反応スピードや思考スピードは速く移動する物体を見ることによって加速されますが、目を動かす自分自身の動きに依存すると、今度は眼筋の筋力が壁となり、どうしてもそこまでしか速めることができません。
 
この「ページめくり訓練」では、目は「2点以外読まず訓練」と比べて、それほど速くは動かしません。しかし、どんどんページをめくっていきますから、単位時間当たりの目の前を通過していく文字の量は「2点以外読まず訓練」と比べて、格段に多いことになります。そこで、視野を絞り込んでしまっては駄目なのですが、広範囲を見るようにしながらページをめくっていくようにすると、猛烈に速いスピードで通過していく世界に入ったような状況が擬似的に作り出されます。ですから「2点以外読まず訓練」が一般道路から高速道路に上がった状況を作り出すのだとすると、この「ページめくり訓練」は、F1の世界のような超高速の状況を作り出すということなのです。
 
視野を絞り込んだら効果は上がらない
 
しかし、視野を絞り込まないようにする初級段階の訓練がうまくいかないと、超高速の世界に入っても目を閉じて周囲の景色を見ないようにするのと同じで、元に戻った時にも脳の反応スピードの加速が起きません。それから、速ければ速いほどいいのかというとそうでもなく、無制限に速いものを見ても、よく見極められませんから、かえって脳が鈍くしか反応しなくなってしまいます。
 
手でページをめくるということで、手の筋肉の動きが多少のブレーキになっていますから、そういう点でもこのページめくり訓練は、脳の活性化にはちょうど手頃な上限のスピードなのです。また、記憶力を高めたり、同時に複数の作業をしたり考えたりする並列処理能力を高めるには、右脳を鍛錬して活性化することが必要不可欠です。その右脳の機能を高めるためにも、この左手によるページめくりは非常に有効なのです。それは、次のような理由によります。
 
1 神経は脳の手前でX字状に交差しており、左手の動きは逆サイドの右脳が司っているので、左手を使うと右脳の運動野が活動する。
2 運動野が活動すると、運動野の血液の流量が約30パーセント増す。
3 運動野の血流量が増したことにより、連鎖反応的に運動野の周辺の脳細胞の血液の流量が、5〜10パーセントほど増す。
4 このような連鎖反応によって、右脳の記憶やイメージを司っている部分の血行量が増すが、それはすなわち、脳細胞の活動に必要な酸素やエネルギー源が多く補給されるということであって、記憶力・イメージ力が向上するということとイコールである。


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