年齢と共に視野は狭くなる |
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特にトレーニングを積まない限り、意識を集中すると視野を中心部に絞り込む、というのが大多数の人間の特徴です。そこで、年齢と共にどんどん視野・視幅・識幅が狭まって、それと同時に右脳がどんどん、不活性化していってしまいます。通常、意識を何か特定のものに集中すると、人間は他の動物に比べて、それを視野の中心で捉えようとする傾向が強く、視幅が狭くなる傾向が見られます。 |
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視野の中心で捉えようとするのは、1つにはそこに「黄点」と呼ばれる部位があるからです。この黄点といのは、最も良く色彩を識別できる領域で、色彩の判別を受け持っている円錐細胞と呼ばれる視細胞が集中しています。そこで、観察しようとする対象を視野の中心で捉えようとすると、つられて視幅まで狭まってしまう理由は、次のようなことが考えられます。 |
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1 |
最も強く意識を対象に集中する必要があるのは、何かミスを犯すことが許されない、というような状況の場合である。 |
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ミスを防ぐためには、チェック・リストを作って、端から1つずつ確認していく直列処理方式による確認が、特に訓練を受けていなくても誰にでも即座に実行できる、という点で、最も優れている。 |
3 |
直列処理においては、現在チェック中の対象以外の物は視野に入れない(余分なことを考えたり、見たり、気を散らさない)ようにするのがよい。 |
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そのために横断歩道の安全確認、駅の安全確認など、すべて「端から1つずつ順番に処理する」という直列処理方式を採用する。 |
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広い視幅の維持は日常の心構えから |
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視幅を常に広く保つには、まず日常生活の中で広範囲を同時に観察する習慣を見に付けること、できるだけ集中度を落とさずに意識を分散させることが大事です。例えば、次のような事を行なってみましょう。さあ、あなたは、いくつくらい即座に実行できるでしょうか? |
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1 |
横断歩道を渡るに際して安全を確認する時、できるだけ視野を広げて見るようにしてください。不安な人は、そういう見方をした後で、左右に首を振って安全を確認してください。人間の網膜に映る単純視野は180度前後の広がりがありますから、トレーニングしていると、同時に左右が観察できるようになるものです。 |
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道を歩く時に、漫然と歩かないで、常に左右の景色を観察しながら歩いてください。左右には、どんな店や会社があるか、看板がある場合には、どんな文字が書かれているか、他人とスレ違う時には、どんな服装をしているかといったことを、そちらに首を向けないで視野の隅で捉えて識別するようにするのです。細かいことはわからなくても、大雑把なことはわかるはずで、やっているうちに、徐々に精度も増してくるものです。 |
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3 |
雑誌や本を読む時には紙面だけに神経を集中しないで、外側の景色も視野に入れ、観察しながら読んでください。時に、道路を歩きながら本を読んでみて、紙面から目を離すことなく文章を読み続けながら道を正確に辿れ、何かに躓いたりすることがなければ、外側の景色が視野に入っていることが確実です。と言っても、最初からこれをやるのは無謀ですから、例えば電車で、座席に腰掛けて本を読みながら周囲に立っている人の様子を観察する、というようなことをやってみましょう。 |
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4 |
テレビを2台以上持っていれば、その2台を横に並べてセットし、別々のチャンネルを同時に鑑賞する、というようなこともやってみましょう。できるようであれば、見る番組の程度を少しずつ難しくしていってみましょう。例えば常には意識を集中する必要のない野球中継から、常に注意していないとストーリーがわからなくなる複雑な筋のドラマに取り組むようにします。
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5 |
テレビを鑑賞しながら、新聞・雑誌・本などを読むこともやってください。これは、3と同じで、交互に見るのではなく、読んでいる紙面のやや外側にテレビの画像が見えるような状態にして、同時並行に見るわけです。できた人はやはり、読む本や見る番組の程度を少しずつ難しくしていってみましょう。本の場合は軽い小説から、ややハイ・レベルなビジネス書へというように、やさしい内容の本から難しい本に取り組むようにするわけです。 |
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6 |
新聞・雑誌・本を読みながら、誰かと打ち合わせたり会議をやってみてください。もちろん、いきなりこういうことをやったら相手に「不真面目な奴だ!」と思われますから、こういう特殊なトレーニング中である旨を言って、了解を得てからやってください。 |
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7 |
運転免許を持っていたら、自動車を運転しながら、前方に注意するだけでなく、ミラー越しに後方を、また、不意の横合いからの飛び出しに備えて左右の領域も常に観察するようにしてください。通常は前方に何もなくても「大丈夫」と見極めた時だけ見るようにしていると思いますが、そうすると、ほんの一瞬、前方が死角になります。稀に、そのためにブレーキを踏むのが遅れて事故になった、ということはあるものです。絶対に進行方向を死角にしない訓練ということですが、これは、いきなりやると肝心の前方が不注意になって事故の原因になりかねませんから、まず1から6のことに取り組んで、ある程度まで実行できるようにやってから、やるようにしてください。ペーパー・ドライバーや女性の運転者に事故が多く、また事故には到らないまでも傍目から見てヒヤヒヤさせる運転が多いのは、運転の機会が少ないために緊張する、その緊張のために視野が狭くなって周囲の状況を直列処理的にチェックしてしまう、死角が増えて目に入らない領域が広くなる・・・・・というようになっているからです。 |