デザイン文字と本の中の文字の違い
 
誰でも景色を眺めている時には、端から1つずつ景色を構成している要素に分解して考えるような面倒なことはしません。大多数の人は、全体を半無意識に見渡し、並列処理で瞬間的に把握しています。たとえその景色の中に文字情報がある場合も同様で、賑やかな繁華街を前にした時、あなたは行きつけの銀行、デパート、レストラン、コンビニエンス・ストアなど瞬時にかつ無意識にそれらを識別しているはずです。
 
その理由ですが、それらの看板は単なる文字情報というだけでなく、
1 文字が模様のようにデザイン化されている(マクドナルドの看板など)。
2 周囲の色彩に特徴がある(セブン・イレブンの看板など)。
3 文字の他に特徴あるマークを組み合わせている(第一勧業銀行の看板など)。
のような工夫が施されています。
 
文字自体の意味は左脳で処理されますが、それに付帯したデザイン、色彩などの情報は右脳で処理されますから、これらが組み合わせていることで右脳が否応無しに活動し、そのために並列処理が可能になって、瞬時に識別されるのです。しかも「一度でも見たら忘れない」というようになります。逆に、いくら大きな文字の看板であっても字体に目立った特徴がなく、色彩も地味で、これと言ったマークらしいマークも付いていないような場合には、識別するのにやや長めの時間を必要とします。
 
それだけ右脳の働きが弱められるからで、なかなか記憶にも残りません。ですから、本の中の文字のように、デザインや色彩が全く工夫されていない(工夫したくても、量が多すぎて工夫のしようがない)単なる文字情報の場合は、右脳を参加させて並列処理する(素早く迅速に読み取る)には、情報の受けてである読者にそれなりの工夫したトレーニングが必要です。
 
反復トレーニングで専門用語のイメージを持つ
 
文字(特に漢字熟語)は、何度か反復トレーニングすることによって、その言葉の意味するイメージ(映像的イメージは無理でも、即座に意味が思い浮かぶ左脳型イメージ)を持つことができるようになり、あたかも記号のように瞬時に認識し、反応することが可能になります。そのためには、特に内容の難しい専門文書を速読で読む場合には、次のようなトレーニングが必要になります。
 
文字(特に漢字熟語)は、何度か反復トレーニングすることによって、その言葉の意味するイメージ(映像的イメージは無理でも、即座に意味が思い浮かぶ左脳型イメージ)を持つことができるようになり、あたかも記号のように瞬時に認識し、反応することが可能になります。そのためには、特に内容の難しい専門文書を速読で読む場合には、次のようなトレーニングが必要になります。
 
1 まずその専門分野に特有の難解な用語をピックアップし、それらに対する定義を明確にしてイメージを持つ(言葉の意味が即座に頭の中から引き出せる)ようにする。これらの用語数は、分野によって多少のバラツキがありますが、だいたい200語から、250語です。もちろん英語となると話は別で、日本語に限ります。
2 ピックアップ作業が終わったら、次は、これらの用語を重点的に学ぶ。知識不足だと、そこで「はて、この言葉はどういう意味だっけ?」と思考が停止して、それと同時に視野が狭まり、速読することができなくなります。英語の場合には、未知の単語は即座に「これは知らない」と自覚できます。ところが日本語の場合は「l個々の漢字は知っているが、その漢字が集合した熟語(専門用語)の概念を知らない」という状況になり、実際には、その用語を知らないにも関わらず、個々の漢字を知っているために知っているような錯覚に陥り、往々にしてその状況を放置してしまいがちです。


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